No. 218 5/5 判らない
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連休はどちらに帰るんですか、と聞かれて一瞬何の事だかちっとも
判らなかったのだけれど、人間いくつもの土地に身を置くとその境
がどんどん曖昧になって行く。目が覚めた瞬間自分がどこにいるの
か判らないというのも珍しい経験だ。逆に言えば、自分のホームは
どこにあるべきかを考える一瞬でもある。出身地はと聞かれて北海
道と答えてはいるが実の所そんなに長くすんだのは釧路でそれもた
ったの9年に過ぎない。八戸は今年で9年目。もうそろそろ"一番
長い場所"になりつつある。しかしこの町にもいささか飽きて来は
じめている自分もいる。

記憶の中で一番きれいな小樽。一番大切な思い出のある釧路。生活
の基盤であるはずの八戸、今一番の興味である東京。

目が覚めて一番最初に思い浮かべる場所。それがなぜか思い浮かば
ない。それが果たして幸せなのか、不幸せなのか。

-=-=

連休で少し時間ができたので部屋にあった甘ったるい恋愛ものの
漫画をいくつか読む。自分にもかつてこれほど狂おしく人を好きに
なったり、些細なことで自分の信念を揺るがされたり、いやそれは
簡単な話、泣いたり笑ったり怒ったりというそれだけの事でさえ自
分の中の思い出にあったはずなのにどこかへ行ってしまった。

いや、確かに思い出の中にはあるのにそれがまるで夢で見ただけの
空想の世界のようで色褪せてしまっている。
そして思い出の場所に行くたびに更にその思い出は色褪せ、現実感
を無くして行く。そして僕はさらに思い出の場所に近づく事を止め
るために新しい町を探すのかもしれない。

-=-=

「彼女ほしいね」
「彼女ほしいね」
「女の子の友達とかいないよね」
「女の子の友達とかいないよね」
「でも、出逢いがないよね」
「うん、出逢いがないよね」

とある日の友人との会話。
はたして彼女がほしい理由は、人に甘えたいだけか、生殖本能か、
昔の恋を忘れたいだけか。
ここ何年かの自分のなかに、記憶しておくべきの想い出がまるで
無いのはどうしてなんだろう。じわじわでいい。想い出にたる何
かしらの事実が。願わくば、それが幸せな結末でありますように。