No. 312 2/4 浸らない
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昔々から何故か花火に惹かれる。

高校くらいの頃、オーディオにはまっていた時期があって、いろいろ
凝ったりしたものだ。放送部に居たりしたこともあって、いろいろな
音を気にしながら生活した時期があったが、その時に思ったのが雷と
花火の音はどんなに効果音として作っても嘘っぽく聞こえると言うこ
とだった。二つに共通して居るのは、空気を割って発生する音だと言
うこと。

こんなしょうがない話を後輩などに良くしていたものだが。

ワタシの事を好いてくれている後輩に、誘われたのがそもそもの始ま
り。氷祭り、という寒冷地ならではのお祭りに行こうと。誘われてい
たのは嬉しいが、ワタシにはベタ惚れした彼女が居て、また三人とも
同じ部活だったもので話はすぐに伝わった。

後輩の誘いを断ったにも関わらず、彼女は拗ねるし、後輩は拗ねるし、
若い私にはちょっと手に負えない状態。でも、皮肉混じりの彼女を連
れだし、祭りへと。っていったって、会場もそんなに広くない、大し
て見る所も少ない祭りである。なんかぎこちないまま、いい時間にな
ってしまった。そんなおり、実行委員らしき人たちが、拡声器でなに
やら言っている。

「7時から栄町A会場で、花火がありますので、みなさん来てください」

本当はそんなに遅くなる予定じゃなかったけど、彼女と顔を見合わせ
て一瞬で決定。彼女ももちろん、ワタシが大の花火好きだと知ってい
るし。

会場はせいぜい200m四方の公園。そのうち3面にはビルが隣接してい
るので所詮大きな吹き出し花火程度だと思っていた。

が、

消防車や救急車がスタンバイする中、小さいながらも花火が打ち上が
る。って、打ち上げてるよ、オイ。

花火ってご存じの通り、夏の風物詩で、こんな氷点下の中で、しかも
真下から見るなんて初めての経験。なんかぎこちなかった二人ももう
そんな空気も忘れて空を見上げる。

ワタシの肩までしかない、ちいさな彼女を自分のコートの中に入れ、
後ろから抱きしめながら見た花火は、今までで一番、綺麗で、そして
いい音でした。

途中ふざけてセーラーの襟元から入れた手の彼女の肩の感触は今はも
う懐かしい想い出です。

...チカさんのサイトを読んで、こんな事を思い出しました。
感謝。